古典に学ぶ

3 ䷧ 山水蒙(さんすいもう)

蒙は亨る。我童蒙を求むるにあらず、童蒙来たりて我に求む。初筮は告す。再三すれば瀆る。瀆るれば告げず。貞しきに利あり。

 蒙は通じる。自分の方から幼い者に教えようとするのではない。幼い者のほうから教えを請いにくるのが教育の本当の姿である。初筮は告げる。もし再三重ねて一つのことを疑い占えば、汚れることになるので正しくつげなくなる。貞正に行うのがよい。

 ハリウッド映画は産道を通ってでる描写が多いが、それはフロイトから来ている。ワープ、洞窟など。しかも、出てきた瞬間は弱い。(ジョーゼフ・キャンベル「千の顔を持つ英雄」)

2爻が正卦主

序卦伝 物生ずれば必ず蒙なり。故にこれを受くるに蒙をもってす。蒙とは蒙(おろ)かなり。物の釋(おさな)きなり。 

 

蒙は、無知・蒙昧の意。知識に乏しく道理に暗いこと。童蒙・壮蒙・老蒙もある。疑心暗鬼で尋ねては何も答えてくれない。真剣に教えを請いたい者には大いに答えてくれる。僅かに知っていることを鼻に掛けるより、知らないことは知らないとする態度こそ、蒙昧から抜け出す早道である。

あっちがよさそうに見えるから他を求めてはいけない。師匠の言葉を信じていかないといけない。学ぶということは誠実ということ。エンタメじゃない。

依頼心・依存心を押さえ、自主的に自分から働きかける努力が肝心。

①辺りは明け方でなお暗く、目前には険しい山がそびえ、五里霧中、一寸先は闇である。

②しかし停滞は許されない。目的を遂げるまで進まねばならないが、しかし誰も進んで導いてはくれない。

③虚心に信念をもって当たる以外にない。そうすれば道は開ける。

各爻

初六 蒙は発(ひら)く、用いて人を刑すに利し、用いて桎梏(しっこく)を説く。以て往けば吝(りん)。

 啓発するには刑罰を厳しくした方が良い。しかし、改心するならば足かせをといてゆるし、その後の動きを観察するがよい。無理を強い仕打ちをすればゆきずまることになる。

非難される。

強烈なショックに見舞われる。初めが肝心。力は弱い。怒るときは怒る。組織においては刑罰が必要。良い顔をしたいのは分かるが、怒らないで理解できない相手の責任にするのは咎である。

 変 41䷨山沢損 何かえたものだけ。何らかの形で失うことになり、気づいて愕然とする。

九二 蒙を包(い)る吉、婦を納る吉。子家を克(よ)くす。

 無知な者をつつみいれて教養を与える。妻を迎えて吉。子はよく家庭を治める。無事で協力がある。六五と応爻。吉

 真心が通じて打開の道が開ける。大抵は無事に納まる。他を誘導する。

 変 23䷖山地剝 有頂天になると危うい。陽気は進むのも早いが、変るのも早い。既に印は足下まで迫っている。逆転もある。

六三 女を取(めと)るに用うることなかれ。金夫を見れば躬(み)を有(も)たず、利ろしきところなし。

 その女を妻としてはならない。金持ちとみれば誘いかけ身持ちが悪い。不貞の女である。節操がない。

誘惑の甘い香りに目がくらむ。色欲を起こすと失敗。女子は不貞。

 変 18䷑山風蠱 まどわし。たぶらかす蠱惑の虫が周りを這っているので、用心しないと危うい。

六四 蒙にして苦しむ吝

 無知の愚かしさに救いようがない。へたに関われば非難される。人の忠告もきかない。援助もない。凶。はっきりしないとき。

 好転の兆しはない。孤立しやすい。意見を聞くと良い。

 変 64䷿火水未済 前途には一筋の光明があるものの、その前に横たわる険難に遮られる。

六五 童蒙、吉なり。

 無知の知。自分が何も知らないということに気づいている。気づいているだけで気づいていない者より優れている。吉である。汝自身を知れ。

 虚飾をはぎとり謙虚に対応すれば自ずと道は開く。真心を持って先輩の意見を聞くとよい。

 変 59䷓風水渙 重苦しい停滞が一陣の風によってまさに散らんとしている。

上九 蒙を撃つ。寇(あだ)をなすに利あらず。寇を禦(ふせ)ぐに利あり。

 むやみに敵は作らぬ事。同時に敵を味方にすること。そのためには人を軽々しく判断しないこと。争いが起こる。未然に防ぐため退いた方が得策。

 変 7䷣地水師 隠れた艱難がいつ噴き出してもおかしくない。負けると取り返しがつかない事態を招く。

蒙は、まったく雑草のようにしぶとく、しかも手強い。人を恨み、恐れるのも、また手軽に絶望しうかつにはしゃぐのも、多くはそこに蒙があって、それによって感情がかき乱されているからであると知っておいて損はない。だが渦中にいる時ほど、それには気づかない。

互卦 26 ䷗地雷復

綜卦 3 ䷂水雷屯

錯毛 49 ䷰沢火革

占いキーワード 

目標がはっきりしない。暗い運気。孤独なとき。

商売では、

プランが立たず、目標がつかめない。こちらにはっきりしないことが多い。解決を焦ると見当違いなことになりかねない。堅実に斬新するほかない。手形などに注意が必要である。経費が多くかかる。勝負は気迷いもあって負け。

恋愛では、

相手の気持ちがつかめない。互いに気遣い、手探りの状態。共通の目標もないままに終わっている。ときたま相手が高圧な態度に出てくる。待ち人は来るが、途中で事故があるため遅れる。結婚は妨げあって調わない。互いに縁遠いことが多く、見せかけや不明瞭な結婚となりがちである。見合いで消えることが多い。

病気は

はっきりしないで長引くことが多い。肺・気管支に注意。

失いもの、

見当たらない。置き忘れのことが多い。

参照:岩波文庫「易経」(上)、「現代易入門」、「易経読本」

関連記事

  1. 第3回 朱子学と陽明学の違い

  2. 第1回 陽明学とは何か

  3. 16 ䷏ 雷地豫(らいちよ)

  4. 第2回 王陽明の生涯と思想形成

  5. 第6回 知行合一論

  6. 46 ䷭ 地風升(ちすいしょう)

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

CAPTCHA


PAGE TOP
Verified by MonsterInsights