升は、元いに亨る。もって大人を見る。恤(うれ)うるなかれ。南征すれば吉なり。
升は昇であり、進み上昇するを意味する。直前の沢地翠が集積して次第に高くなることから、いよいよ昇になる。
序卦伝=翠は聚なり。聚りて上るものはこれを升ると謂う。故にこれを受くるに升をもってす。
風は木をを表し、木の芽が地中から成長する象と見立てる。
産みの苦しみを味わいながら進む水雷屯、太陽のように周りを刻々と明るくしながら進む火地晋、水がじわじわ浸透するように進む風山漸とは違い、この地風升は地中で活力を十分蓄えているので、無理なく邁進する。順風満帆で余裕すら感じられる。ただし、その条件は経験豊かな人物の出会い。上昇気流を確実にしてくれる。引き立ててくれる人にも欠かないので心配する必要はない。
また、時勢が大事だし、環境が大事。
各爻
初六 允(まこと)に升る。大吉なり。
志をあわせたくましく高きにのぼっていく。吉。絶えず努力をすれば良い。次第に上昇する。
条件は5爻の先輩と志を合わせて「大なれば」だが、併せてくれるので大丈夫。
変 ䷊地天泰 勢いよく陽が伸展し、天地の気がまさに相通じようとしている。
九二 孚あれがすなわち禴(やく)を用いるに利ろし。
誠があれは質素な祭を行っても神意に通じる。災いはない。六五と応爻。大業をなし得る。終りに幸せあり。従い行くのも良い。祭祀を行うので、少々骨が折れる。祭祀は沢地翠の2爻に同じ。
変 ䷎地山謙 十分誇るに足るものを持ちながら、あくまで謙虚であるなら、いつか周りは心服する。
九三 虚邑に升る。
勢いがあって無人の村を進むが如きである。順風満帆。しかし内実に欠けるところがある。
妨げる者がいないが、無人の村で中身はない。
変 ䷣地水師 時として平和な日常にも険難は出現する。だが逃げてはならない。あくまでも踏み止まって解決しなくてはならない。
六四 王もって祁山に亨す。吉にして咎なし。
文王は人材を登用し、西の山(沢雷随の上爻の西山)=岐山に祭祀を行う。吉あって災いはない。和気あいあい。実力が認められてくる。初爻の柔順な人を登用する。物欲はダメ。
変 ䷟雷風恒 自分の立場を忘れ、再三方針が変るなら、事は行き詰まる。
六五 貞しければ吉なり。階(きざはし)に升る。
貞正にして大吉。王位につき志を得る。昇進吉。重要な仕事を成し遂げる。大願成就。仕える者が昇るようになる、つまり部下が昇っていく。
変 ䷯水風井 最後まで油断してはならない。仕上げが肝心である。
上六 冥(くら)くして升る。息(や)まざるの貞に利ろし。
暗闇に昇る。昇りすすみ、退くことを知らない。態度を変えて自重するとよい。極めに来ているので、もう昇れないが、止まるのではなく積極的に昇るのを止める。決して退くことではない。故に縮小均衡になってはダメ。不況だから広告や人を減らしてはダメだ。
変 ䷑山風蠱 秩序はすでに崩壊し、今は腐敗堕落している。これを改めることが先決である。
互卦 ䷵雷沢帰妹
綜卦 ䷬沢地翠
錯卦 ䷘天雷无妄
①目的目指して勢いよく昇り進む。
②妨げる者はいない。今は行けるところまで進むがよい。
③よき先輩に従うなら、案ずることはない。
占いのキーワード
進むが吉。急ぐといけない。地位上昇。
開運又は転機の時勢であり、好調の波に乗るとき。目上の引き立てもあり、実力も認められ地位も昇進する。目標や理想に向かって着実に前進して良い。迷うと損をする。
商売では
急がずに小さいことから積み上げ処理していくと良い。強気が出ても良いが、繰り返しが大切で達成までは時間がかかる。迷って損することが多い。有識者や専門家の意見は大いに聞くこと。勝負は勝ち。
愛情・結婚では、
将来の見通しも明るい。恋の芽は伸びていく。若さがあり楽しい。精神的に安定しているので積極的に手を差し伸べるとよい。初体験は早いほうだが深入りしない方がいい。結婚は良縁、玉の輿にのるときもある。迷って損をする。正式な順序を踏まないと破れることがある。
病気は
軽症とみて、気づかなかった病根が出てくる。長い病気は危ない。
失い物は
発見しにくい。
参照:岩波文庫「易経」(上)、「現代易入門」、「易経読本」
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